「親方、固定終わりました」
「おう。それじゃあ魔道具を取り付けるぞ」
さっき井戸に入ってった職人さんが出てきてパイプを着け終わったよって。
と言う訳で、今度こそ魔道具の取り付けにかかったんだ。
「親方、水の出口はこっち向きでよかったですよね?」
「ちょっと待て、図面を見るから。ああ、それであってるぞ」
だから僕、どうやって付けるのかなぁって見てたんだけど、何でか知らないけど職人さんたちがお風呂と全然違う方向にお水の出口を向けたもんだからびっくりしたんだよね。
「ねぇ、おじさん。お風呂、あっちだよ? 何で違う方にお水が出るとこを向けてるの?」
「ん? ああ、それはな。この井戸が風呂だけじゃなく、調理場に使う井戸でもあるからなんだ」
職人のおじさんに言われて思い出したんだけど、そう言えばここってお料理を作る時にも使うんだっけ。
なのにそこから汲むお水を全部お風呂に使っちゃったら今度はお料理が作れなくなっちゃうから、今からどっちにも使えるようにするんだよっておじさんは教えてくれたんだ。
「ただとりあえずはその前に、魔道具がちゃんと設置できたかどうかを試してはみるがな」
「親方、チェックをお願いします」
僕と職人のおじさんがそんなお話をしてる間に、若い職人さんたちが魔道具を井戸にくっつけ終わったみたい。
「おう! うん、ちゃんとできてるな。それじゃあ試運転に移るか」
まだ魔道リキッドは入ってないけど、風の魔石には作る時にちゃんと動くか実験するために魔力を注いであるでしょ?
もしつけ方が悪くってお水が上手く出なかったりしたらもういっぺん外してやり直さないとダメだからって、今はその魔力を使って動かしてみる事になったんだよ。
「それではスイッチを入れます」
職人のおじさんはね、ロルフさんやバーリマンさんに向かってそう言うと、魔道具についてるスイッチを入れたんだ。
そしたら最初に少しだけすーって言う空気が抜けるような音がしたと思ったら、その後にすぐジャバジャバってお水が勢いよく出てきたんだ。
「よし、何処からも水漏れは無いな。フランセン様、魔道具の設置は無事終了しました。引き続き使用するための金具やパイプの設置に入ります」
「うむ。よろしく頼む」
ロルフさんが続きのお仕事をやってもいいよって言うと、職人のおじさんたちは魔道具のお水が出てくるところになんか別の金具をつけ始めたんだよ。
でね、どうやらその他にも何個かの部品をくっつけるみたいで、他の職人さんがおじさんの周りにへんてこな形の金具や道具を並べてったんだ。
「ねぇ、ロルフさん。あれは何やってるの?」
「それはな、ルディーン君。水の出口を複数作っておるのじゃよ」
さっき職人さんが言っていた通り、この井戸はお風呂にもお料理を作るのにも使うでしょ?
これがもし、どっちもここでお水を汲んで持ってって使うって言うんならこのまんまでもいいんだけど、お風呂の方はボイラーまでパイプでつないでその中にお水を流す事になるから出口をもう一個作んないとダメなんだってさ。
「ほれ、あそこに大きなレバーが二個ついておる金具があるだろう?」
「うん」
「あれを開け閉めする事で、水が出る場所を変える事ができるのじゃよ」
ロルフさんが言ってる金具にはね、ブルーフロッグの背中の皮が周りにぐるっと巻いてある板が入ってるそうなんだ。
ブルーフロッグの背中の皮は、煮ると柔らかいクッションみたいになるよね?
それにお腹の皮とおんなじでなめしてから乾かすとお水を全然通さなくなっちゃうから、あのレバーでその板を動かすとパイプの中がギュウって栓をされちゃってお水が通らなくなるんだってさ。
「実を言うとな、あの道具もつい最近開発されたばかりなのじゃよ」
ちょっと前まではね、おんなじことを柔らかい木の板でやってたんだって。
でもそれだとだんだん木が緩んで来ちゃうから、何年かに一度は好感しないとダメだったんだよってロルフさんは言うんだ。
「そうなの?」
「うむ。別の用途としてならブルーフロッグの皮は前から使われておったのじゃが、このような使い方はつい先日まではもったいなくてできなんだのじゃ」
ブルーフロッグってイーノックカウの近くの森にいっぱいいるんだけど、それをやっつけるのにみんなが剣で切ったり叩いたりするもんだから、背中の皮は傷だらけでその殆どが捨てられてたんだって。
でもつい最近新しい使い方が見つかったもんだから、その余ったところの使い方がいろいろと考えられてるんだよってロルフさんは僕に教えてくれたんだ。
「この使い方もな、新たな使い方が見つかった時に樽の栓の代わりに使えるのではないかと言う話が出たそうで、その発想から開発されたものなのじゃよ」
「そう言えば、ニールンドさんがそんな事言ってたっけ」
僕が傷だらけのブルーフロッグを丸く切り出した時、それを見たニールンドさんがそんな使い方ができるねって言ってたんだ。
そっか、そう言えば樽の栓も何度か開け閉めしてたら買えないとダメだもんね。
僕はそう思いながら、ひとりでうんうんって頷いてたんだけど、
「何じゃ、ルディーン君は傷付いたブルーフロッグの背の皮の新たな使い方を知っておったのか?」
「うん。だってそれ、僕が思いついたんだもん」
ロルフさんがこの使い方を知ってたの? って聞いてきたもんだから、僕が考えたんだよって教えてあげたんだ。
そしたら、それを聞いたロルフさんはびっくり。
「なんじゃと? ではあの新たなブルーフロッグのマットレスやクッションは……」
「うん。僕ね、最初に冒険者ギルドでブルーフロッグのお話を聞いた時に、捨てちゃうなんてもったいないなぁって思ったんだ。だから丸く切って使おうって思ったんだよ」
ホントはみよんみよんする鉄があったらそれで作ろうって思ってたんだけど、ブルーフロッグの皮でも十分みよんみよんしてたもん。
だからクッションも作れるって思って、ニールンドさんに教えてあげたんだよね。
「なんと……このような使い方を思いつくとは、冒険者ギルドにも頭の切れるものがおるのだなと感心しておったのじゃが、まさかこれもルディーン君が考えたものじゃったとは」
ロルフさんはね、冒険者ギルドから特許申請がされてるのは知ってたけど、別に作り方が隠されてたわけじゃなかったもんだから誰の名前で申請してあるかまでは調べてなかったそうなんだよね。
だからさっきまで、ずっと冒険者ギルドの誰かが考えたんだろうなぁって思ってたんだってさ。
「じゃが、なるほど。言われてみれば確かに、ルディーン君が考えそうな事じゃったな。普段取り扱っておる者たちでは自分の中の常識のせいで思いつかないアイデア、それを形にしたものをこれまでも見せられてきたしのぉ」
でも僕が考えたんだよって聞いて、ロルフさんは長くて白いお髭をなでながら、笑顔で解る解るってなんども頷いたんだ。
ブルーフロッグ&ポイズンフロッグの背中の皮、ベッドのマットレス以外にも使い方がいろいろと考えられているようです。
そりゃそうですよね。魔物のポイズンフロッグだけではなく、まだ動物であるブルーフロッグの皮でさえ冒険者が何度か斬りつけないと倒せないほど丈夫な皮。
その上煮ればかなり柔らかくなり、その上なめせば完全防水になるのですから、マットレスだけに使うなんてもったいないですからね。
これからもきっといろいろな使い方が開発されて、そのたびに傷付いたブルーフロッグの皮の新たな使い方を特許申請したルディーン君にお金が入っていく事でしょう。
ホントこの子は、どれだけの不労所得があるんだろうか?w